耳鳴り、難聴と肝・腎の関係:研修で学んだことと董氏の鍼

董氏奇穴図譜治療学にある「花骨一穴」

『董氏奇穴図譜治療学』中華民国88年(1999年8月)第三刷版
音は外耳から中耳、内耳へと伝わります。
内耳では電気的信号に変えられ、神経を介して脳に伝わります。
この流れの中で、どこかに障害があると、聞こえが悪くなって難聴になります。
耳が聞こえづらいと感じた状況別を分けてみますと以下のようになります。
① 外傷(耳をぶつけたとか耳かきでほじくり過ぎた等)
耳かきでの外傷は鼓膜に傷がついたときで、こんな場合は耳鼻咽喉科で診てもらったほうがいいです。
② 大きな音を聴いて難聴になる人も少なくありません。
この場合は、聴覚を司る蝸牛(かぎゅう)が大きな音や衝撃により損傷を受けたことによって起こります。
③ 大音量で音楽を聴いたりした後に、耳がキーンとして詰まった感じになる「急性感音難聴」と呼ばれる難聴。
④ 騒音の中で長期間働いて起こる「騒音性難聴」と呼ばれる難聴。
⑤ 耳が炎症を起して起こる難聴。
飛行機に乗って急激な気圧変化や、風邪やインフルエンザになったときの難聴。
いわゆる「急性中耳炎」と呼ばれる難聴。
⑥ 耳に水が入ったときに聞こえなくなる難聴。
⑦ ダイエット等で体重が減少したときの「耳管開放症」と呼ばれる難聴で、所謂栄養失調による難聴です。
⑧ 睡眠不足、精神的ストレス、騒音などの肉体的ストレスなどで、耳鳴りやめまいが起る場合もあり、突発性難聴、メニエール病、低音障害型感音難聴の引き金になる可能性もあると言われます。
⑨ 薬の副作用によるもので、結核の薬、リウマチの薬、利尿剤、抗がん剤などが知られています。所謂薬害です。
⑩ 加齢によるもので、内耳や神経や血管の老化で「老人性難聴」と呼ばれるものです。
⑪ 突発性難聴。原因が特定されない場合が多く、鍼灸院に来る方々の多くがこの「突発性難聴」です。
さて、難聴を治療する方法としては、耳の周囲にも鍼を使いますが、臓腑活性も考えて「肝・胆」と「腎・膀胱」も狙います。
狙うと言っても、鉄砲で撃つわけではなく、肝臓系と腎臓系の機能を整えるということです。
その方法は、手足のツボを使っての「経絡治療」もするのですが、今までの経験からすると巨鍼が著効を現したように思えます。
というのは、小さい鍼だけで治療するよりも、巨鍼を使ったほうが治療回数が少なくて済むのです。
「大きな鍼が怖い」と言う人には、巨鍼は使いませんが……。
それは何故かというと、耳の構造は「膜」「耳小骨」「筋肉」で構成されているからです。
そして、東洋医学では、「肝は筋膜を主る」と言い、筋肉や膜は肝臓が支えているという言い方をします。
さらに、「腎は骨髄を主る」とも言い、腎が骨や髄を支えていると考えられてきたわけです。
となると、先ほどの耳の構造は、「膜、筋肉、骨」でしたので、肝と腎に支えられているということになります。
つまり、肝と腎が整えば、肝経、腎経が支えている器官も整うと考えることができるわけです。
もちろん、難聴などになると耳自体も代謝が落ちていると考えますので、耳の周囲も代謝を上げるために鍼をします。
ここまでは一般的な東洋医学なんですが、先日の研修では、なんと、足の裏に鍼をするのです。
聞いただけで痛そうですが、実際にも痛そうでした。(^_^;)
がしかし、鍼をした後は聞こえが良くなるようでした。
そのツボのことを、董氏の鍼では「花骨一穴」と言い、主治に「耳鳴、耳聾(じろう)」と書かれています。
董氏とは台湾の有名な医家で、独自の経穴や手法であらゆる難病を治療して来られた先生です。
耳聾とは、耳が聞こえないことですので、難聴と言うことです。
そして、このツボの位置を診ますと、肝経が流れる足裏になります。
つまり、足裏から肝経を狙っていると考えることもできます。
「それなら裏から狙わずに足の甲から鍼をすればいいではないか」という質問が出てきそうですが、その本には「鍼の深さ5分から1寸」と書かれています。
つまり、それだけの深さだと足裏から足の甲の近くまで突き通し、途中の筋肉や腱も整えていると考える事ができるわけです。
即ち、経絡というのが、筋肉に影響を与えているとすれば、深いとところにある筋肉を強く刺激することで、治療効果を上げることができると考える事ができるわけです。
実際にも、中国鍼と日本の鍼を使ったときの違いを知っている鍼灸師は多いはずで、中国鍼の刺激量は、日本の毫鍼とはかなり違います。
私たちが実験した結果によりますと、5番鍼と3番鍼でも大きな違いがありました。
その実験の様子は 『人体惑星試論奥義書』 に書いてありますので、興味のある方はそちらを参考にしてください。
それで、昨日の研修では、鍼をした直後に、「どう? 聞こえる?」と質問すると、「はい。先ほどより聞こえる気がします」という答が返ってきました。
鍼をして5分か10分ほどして、そのような返事が返ってくるのです。
もっとも、こちらの先生は有名な先生ですので、「治る」のが当然かも知れません。
当院での耳の治療は、経絡治療、耳周囲への刺鍼、巨鍼で肝腎を整える、というパターンで、それなりにいい結果も出しているのですが、その共通点を考えますと、やはり「肝・腎」の治療がメインになっているのではないかと考えました。
その他にも興味深い治療法がありましたので、先方の先生(医師)に迷惑がかからない範囲で、研修報告をさせて頂ます。
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